スリング
スリング(シュリンゲ)とは、リング状になったロープやテープで、支点と支点、支点と体を連結するために使用。
スリングにはテープスリングとロープスリングがあります。しかし、一般的にスリングといえば、販売段階からテープスリングを縫い合わせリング状にしたソウンスリング(ソーンスリング)を示す場合が多いようです。
スリングの素材
スリングの素材は、ナイロンとダイニーマの2種類。
ダイニーマは、超高分子量ポリエチレンを原料に最新のテクノロジーで生み出された超高強度・高弾性率を有するスーパー繊維。強靭でわずか10mm程度のテープスリングで強度22KN。同重量だとナイロンの5倍程度の強度を誇ります。吸水性が低いため、水に濡れても強度と重量が変わらず凍結にも強い。一方、毛羽立ちが若干目立ち、ナイロンスリングより寿命が短い。
ダイニーマの特徴として、融点は150度とナイロンより低いが摩擦抵抗は小さい。状況により係数が変化するので、融点だけをとって一概に優劣をつけるのは難しい。
例えば流動分散など、摩擦抵抗が小さいほうが常に均等な姿勢を保ちやすく摩擦熱も発生しにくい。一方、摩擦抵抗が高いと均衡が偏ってもある程度踏ん張るので、瞬間的にズレ動く幅は大きくなる傾向にあり、必然的に熱や振動が発生しやすくなります。
ナイロンスリングのメリットとデメリットは、ダイニーマが反転。
吸水性が高く、濡れると最大25%の強度低下が起こる。凍結にも弱い。しかし、しなやかで毛羽立ちにくく、ダイニーマスリングより寿命は長い。
融点は225度とダイニーマより高い。
テープとチューブ
ダイニーマスリングにはテープとチューブがあり、テープは幅が10~12mm程度、チューブは8mmと細いが縫い目部分は押しつぶされ幅広になっています。
強度が確保されていればどちらでも構いません。
エーデルリッド社など8mm
プルージックコード
プルージックコードとは、バックアップ専用ロープスリング。フィックスロープ確保やラペリング(懸垂下降)時に、フリクションノットで使用します。
フリクションノット(摩擦結び)は、プルージック、クレイムハイスト、オートブロックなどが有名。
中でも代表格がプルージックという結びで、その名をとってプルージックコードと名がついているようです。
エーデルリッド社などプルージックコードは7mmが標準ですが、7mmの適応シングルロープは11mm以上とされており、昨今メインロープは10mm以下も普通となってきた現在では旧来のシステム混在は難しくなっています。
フリクションノットは、メインロープとの太さの差が4~5mm、もしくは、メインロープの1/2とされており、実際に、10mm以下のメインロープに対し7mmコードだと効きがよろしくありません。
また、沢登りで補助ロープ8.0mmなどに7mmでは明らかに無理があります。
10mmを切るシングルロープには、ダイニーマ素材など細身のソウンスリングを巻き付けて、オートブロックなどフリクションノットとするという手も・・・と文部省登山研究所。試したがこれまたよく効く。
また、渡渉などフィックスロープでの確保はsimpleアッセンダー(タイブロックなど)を用いれば済むところもあります。
しかし、ツインロープなど使用場面はまだまだありますので、一応7mm×140~150cmを2本用意しときましょうか。
どうしても7mmが許せない方は、アラミド素材なら6mmでも問題なし。
ところでプルージックコードの長さですが大体140cm。レスキュージャパンでも140cmで販売しています・・・が、150cmで切っといて結びで調整、どうしても長いと感じてから140cmに切り直せばいいでしょう。
あとプルージックコードは、ダブルフィッシャーマンズノットで自作します。結び方を手早くできるよう覚えないといけないことと、初めから縫い合わされているスリングはブリッジプルージックができません。
贅沢ですが、縫い合わされている90cm程度のアラミドコードを切り離し、長さ調整のうえダブルフィッシャーマンズノットで結び直すという手もあります。
プルージックは荷重がかかると固く結束するのでオートブロックを推奨・・・という山岳会もありますが、プルージックはオートブロックよりフリクションが強く、片手でできる唯一のフィリクションノットと言われ避けては通れない。
また、難点である強い結束で解けなくなることは、ブリッジプルージックを用いれば大分緩和されます。とにかく重要なことは、持っていればいいということではなく、プルージックコードとメインロープとの相性確認し、強度が保たれているということと、また、さまざまな手段と知識を身に着けているということです。
そうすれば応用も広がります。
パーソナルアンカーシステム
マルチピッチクライミングで、セルフビレイとして使われるパーソナルアンカーシステム。
もともとはエイダ―(あぶみ)と組み合わせ、クライマーとプロテクションの間隔を調整する目的でデイジーチェーンが生まれた。しかし、デイジーチェーンがセルフビレイとしても使われるようになって、大きなリスクをいくつも抱えることとなった。
そこで、セルブビレイ専用にパーソナルアンカーシステムが誕生。
そもそも、パーソナルアンカーシステムとデイジーチェーンは用途が違うので改版ではありません。従って、デイジーチェーンは現在でも販売されています。
どちらにも転用できるが、一歩間違えれば・・・というリスクはデイジーチェーンが遥かに多い上に、携帯性はパーソナルアンカーシステムの方がよい。当倶楽部でのセルフビレイはパーソナルアンカーシステムに限定、デイジーチェーン禁止。
METOLIUS PAS22 / メトリウス PAS22
アルパインPASもあるが、強度が14KNしかない。間違えないように。
BLACKDIAMOND LINK-PAS / ブラックダイヤモンド LINK-PAS
マルチチェーンEVO
MULTI CHAIN EVO / マルチチェーンEVO
climbing technology / IWATANI-PRIMUS
デイジーチェーン
http://www.grivel.com/products/rock/accessories/56-Daisy+chain
MAGIC LIZARD スリング規定
スリング
超素材ダイニーマ、耐衝撃22kN
ナイロン素材の吸水性による強度が低下を重視し、当倶楽部はスリングにダイニーマを規定。ナイロンはNG。
沢登りと難所通過の簡易ハーネスに関しては、22kNが保障されていればナイロンでも可。
プルージックコード
フリクション専用コード7mm×140~150cmで自作。
アラミド素材は6mm、ケブラー素材は5.5mmでもOK。
パースナルアンカーシステム
素材は超素材ダイニーマ
当倶楽部では、デイジーチェーンでのセルフビレイ禁止。
ブラックダイヤモンドテクニカルインフォメーションに、デイジーチェーンに潜むリスクが詳細に解説。
・デイジーチェーンの危険な使い方
スリングのメンテナンスと耐用年数参考値
全く未使用:最長10年
まれに使用:2年に1回 7年まで
時々使用:月に一度 5年まで
定期的に使用:1ヶ月に数回 3年まで
頻繁に使用:毎週 1年まで
常に使用:ほとんど毎日 1年以下岩場でハードな一日を過ごすと、スリングおよびウェビングは土や埃に覆われます。
スリングの品質と安全性を維持するため、定期的に手入れをする必要があります。汚れたスリングをお湯に浸して石鹸と少量の中性洗剤で手洗いするか、洗濯機のソフトサイクルで最高30℃のぬるま湯で洗います。きれいな水ですすぎます。陰干しします。
乾燥した涼しい暗所に、袋から出して、スリングを保管してください。
直射日光、化学物質、熱から保護します。特に、化学物質や熱源に接触しないようにしてください。
腐食性化学物質は目に見える損傷はなくとも、ウェビングの破断荷重を著しく低下させることがあります。
接触してしまった場合には、スリングを直ちに交換してください。
MAMMUTダイニーマスリング取り扱い上の注意から抜粋